お腹のみかた、触れ方

十四経発揮

 
 
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診病奇侅(しんびょうきかい)多紀元堅著 久次米晃先生 翻刻・現代語訳から抜粋し転載しています。
腹診を行う上で大変に参考になる記述が網羅されています。ぜひご一読下さい。
そしてそれを治療に生かして下さい


外感病は脈で知り、内傷病は腹で知るというのは、その通りである。腹は病の根源の場所であるので、腹を診ない
医者は十分な診察をできない。発病は、その一年二年前から、腹の厚薄虚実の状態で予知できるものである。【白竹】

 

診腹法が根拠とするのは『黄帝内経』の「刺禁論『難経』の「八難・十六難、以上三篇である.。『難経』の「八難」
「その他の篇にも記述はあるが、この三篇で腹部のことは決定できる『黄帝内経』『難経』でどのように論じられて
いるかというと、まず最初に正常な人の状態を論じ、次に病変のある状態を論じている。『難経』で離経の脈を論ず
る場合に、正常な人の脈を論じた後に、離経の脈を論じているのと同じである。【玄悦】

 

治療が上手にしようと思うなら、腹診に心を用いなければならない。死生の予想をし、病の軽重を判断するのに、腹診
以上のものはない。

腹診を正確にできるようになろうとするなら、まず無病の腹がわからなければならない。無病の腹を基準にして、朝夕
試行錯誤しながら鑑別していくと、必ず正確に診断できるようになる。怠ってはいけない。【南陽】

 

腹診の教えでは、正常かそうでないかをわかるようにするのが第一であり、病邪を細かく診断するという段階は、診察
する者が自分で修得するものである。
ましてや積聚・癥瘕・水腫・鼓脹などは、病形根が堅く、元気は何となく虚しているだけであ、正邪が相離れ、腹診で
は虚がはっきりとあらわれていないことが多い。これらの症は、脈を中心に診断・治療するべき病気である。
それを、腹象だけを根拠にして、きつめの処方をすると、虚をひどくしてしまう虞れがある。【對時】

 

外感病では、腹診はあまり頼りにならない。傷寒などは邪気の病であるので、いくら腹の状態がよくても死んでしまう
ことがある。だが、傷寒でも腹に潤いがあり、元気が十分であるなら、熱がはげしくても醒めやすい。
元気が弱く、陰分が衰えて虚火が亢っている場合は、邪熱と合わさって死症になりやすいものである。内傷の病は、
腹の状態を第一に考えるとよい。病症がいくら重くても、腹の状態がよいうちは死なないものである。【良務】

 

内傷病で、腹に滞りがないということはない。腹は臓腑のある場所である。だから、腹にあらわれないわけはない。
病が発症する以前から、本人に自覚がなくても、いつとはなく腹に滞りや痞えができていて、その後に病証があらわれ
るものである。
そのため、無病の人でも腹の状態を考えて、大病になるかもしれないと予測するのである。【同上】

腹診の法は、心を平静に保ち、容貌はゆったりとし、手つきもおだやかにする。荒々しいのが最もよくない。
(寒さが厳しい季節には、爐火を用意してもらったり、懐手をして温めた上で、まず自分の肌で冷たくないか試す。)

そのような準備の後、患者を仰臥させ、手足を楽に伸させ、帯を解かさせる。

 

しばらく患者の呼吸の様子を観察した後、まず胸上を撫でて、それから腹を通り、臍まで撫で下す。周囲も診、高低・
平直を診察し、胸上に戻る。腠理の潤枯・皮膚の硬軟・虚里の動を調べ、心肺の虚実・三脘脾胃の部や両脇下・肝の部
の状態を診、臍下に至る。臍下は元気の繋る所であり、十二経の根本で、最も重要な所である。
以上が腹診の概要である。【無名氏】

 

一般に腹診をするのは、早朝の、急でない時がよいとされている。

医者は患者の左側に座り、心を落ち着かせ集中する。まず示指・中指の二指で虚里の動を診た後、膻中から丹田までを
二三回ほど撫でる。(患者の心気を安静にし、また逆気を下降させる。)その後、心下・三脘を按じ、次に少陽、次に
陽明、次に両脇、次に少腹、最後に神闕を診察する。
これが概要である。診察が終わった後、全体に胸から腹を一通り撫でるとよい。【台州】

 

腹診は手を平たくして診察しないといけない。そうでないと、患者は不快感を覚える。

まず鳩尾を診、次に水分、それから次第に任脈の通りを臍下までを診察する。

動気のある場合、任脈自体の動気であるものと、左右の動気があって、それが響き反応しているものがある。
この違いを綿密に識別しておかないと、処方には違いがある。
それで、最初に鳩尾・水分、その左右、積気が胸骨に入っているかいないかを診し、更に左右、筋骨、章門を診察する。
これが概要である。虚里の動は腹診の最後に診るとよい。【東郭】

患者を仰臥させ、両脚を伸ばさせ、両手を大腿の横につけさせ、医者は患者の左側に位置する。
(これは通常のやり方を述べている。
患者を動かしにくい場合は、やりやすいようにするとよい。)右の膝を(患者の)肩髃に当て、膝を開き臍下を張り、
右手を患者の心上にゆったりと置き、しばらく患者の気配をうかがってから、診察に移る。

 

その順序は、まず置いた手をゆっくりと左右に移し、虚里の動及び心胸中の煩悸を候う。これを「覆手圧按の法」と
呼ぶ。
次に、右手の示指・中指・薬指の三指頭を立てて、上は缼盆から順番に左右肋骨の間を細かくに探りながら下る。
これを「三指探按の法」と呼ぶ。(これは胸中の虚実緩急を候う法である。少しでも指頭に触れるものがある場合は、
指を止めて按じ、痛むか痛まないかを問う。
一般に上部で凝結しているものは、両乳の上から缼盆の間に見つかり、痛みはがまんできないほどである。
また、左右の肩付近の骨際も調べないといけない。痛みが強いものは皆血脈が凝結していると考える。)

 

次に、その手を胸骨〔蔽骨〕に沿って鳩尾まで下り、一度は浅く、一度は深く、心下の虚実を候う。更に、その指頭を
左右の季肋に沿わせて章門の辺まで進める。戻って上脘の辺から臍下まで中・左・右と幾筋も探り診察する。
(任脈から始まって二行・三行及び左右の脇下、章門の下の筋まで幾筋も按じ下る。)

次に、少腹の中・左・右も同じように幾筋も按じ、腸骨〔傍髀骨〕の際、気衝の脈までを診察する。

再び「覆手の法」を用いて、指頭を浮かせ、手掌の側骨に力を入れて、心下から臍下まで順番に圧按しながら下る。
(この時医者の体を前傾ぎみにして、少しだけ体の重みを右手に乗せ、徐々に腹を推すとよい。これは腹中の動気を候う
法である。)
その時、指頭に触れるものの形状を慎重に診察する。まっすぐ推しても痛まないのに、斜めに探ると痛むものもある。
(芎帰膠艾湯の腹証などは、これである。)浅く按じないとわからないものもある。
(心下胸下の悸などは、これである。)
深く按じないとこたえないものもある。(腹底の動や堅塊の類が、これである。)
また、緩急・小大・滑濇・堅脆・寒温などすべてを丁寧に観察するのであって、あわただしく按じるようではいけない。
【和久田 ○この説、従いがたき部分がある。但し、中に一二の取るべき点もある。それで仮にここに記載する。】

平人腹形

腹診は、健康な人[平人]の腹の見方を決めるのが、まず重要である。健康な人の腹というのはどのようなものかと言
うと、鳩尾から臍までを指で撫で下ろすと、まん中が少しくぼみ、臍も少し少くぼみ、小腹がふっくらとして、自然と
少腹・臍下に根があるのが、健康な人の腹である。これは実際に撫でることでわかってくることである。
修得しなければわからないことである。図などを用いて様々に論じたりもしているが、どれも皆誤りである。【玄悦】

 

健康な人の腹というのは、下がふっくらとして、まるで布袋和尚の腹のようで、弱くもなく虚してもいず、内外しっか
りとして、陽気が深く、温順で、皺でざらめくこともなく、にっとりとして、奥の方に手ごたえがあり、気は外へ向かっ
て張っていて、呼吸に偏りがなく、上下のつなかりがあるのを、平腹というのである。【白竹】

 

腹の上下左右に何の妨げもなく、静かでしっかりと堅固で、章門・天枢の辺りがふっくらとして、鳩尾の辺りはすいて
いて、丹田気海の辺りがしっかりとしていて、くくり枕を推すのに似た感じがする、これが、健康な人、つまり無病の
腹である。
この状態がよくわかっていると、どれが病人の腹かも自然と理解できるものである。【南瞑】

 

健康な人の腹は、蝉の腹に似ていて、三脘が平らで(凹凸がないということ)、動気がないのは、胃が和しているとい
うことである(飲食を節制している者の場合)。
また、腹皮が堅実で廓大であり、あるいは柔軟で力が入っていず(臓腑が実して肥っている者の場合)、上腹部が低く、
下腹部が豊かで、臍は凹み、任脈は低く、その両傍が盛り上がっていて(「腎の両枚壮盛」という。
つまり、小腹を指す)、塊や動気のない者を、無病という。【台州】

 

健康な人の腹を診察できるなら、病人の腹は自然とわかるようになる。

健康な人の腹の形は、蝉の腹に似ていて、下腹部が張っているのが無病である。胃気が通利し、腎気が実しているため
である。また、腹の強弱は脂膜の多少による。
脂膜が少ないのを弱とし、多いのを強とする。脂膜で臓腑を養うからである。
仁王の腹に似ているのは、壮実である。

 

腹を按じた時に、むっくりとして滑であるのが良い。がさつくのは良くない。日にすかしてうぶ毛にツヤがあるのは、
血気盛である。三脘が平らであるのは、中焦が無病であるということである。

按じた後手を引くと、すぐに張りが戻るのは、実である。戻るのが遅れるのは、虚である。

腹皮をつまんだ時に、皮と肉がくっついているのは、実である。
鼠猫などのように皮と肉が離れているのは、血気衰である。
老人の腹の多くは、この類である。【同上】

 健康な人の腹は、左の方へ少し偏って力があるものである。注意しないといけない。【同上】

一般に、人の腹の皮は、上の方が厚く、下の方は薄いものである。【東郭】



  
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