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| HOME > 学習ノート> >お腹のみかた、触れ方④ 鍼道秘訣集 夢分流 ◎心持ちの大事 他の流派では、どの病気にはどこに何分刺入するなどということばかりを重要視し、最も大切なことを忘れている。 我が流派で最も大切にするのは、刺鍼する時の心持ちである。 次のような言葉がある。 「無心のままに技に没入し、心の中に何もなければ、自然のままに虚であり、その霊空の心境に比べられるものはない。引いていない弓、放っていない矢で射れば、それは的に当たりもしなければ、はずすこともない」。 これが我が流派の心持ちの奥義である。この言葉を心に温めながら、刺鍼の鍛錬をしなければならない。 ◎三の清浄 ![]() 以下は、三つの心を清浄にする方法である。 これは心の字の形である。 三つの輪は、心が清浄であるためには唐衣をくると思ってはいけない。取ろうと思ってはいけないということである。 貪欲(むさぼる・瞋恚(いかる)・愚癡(おろか)の三毒は、清い月のような心を曇らせてしまう暗雲のようなもので ある。次のような歌がある。 貪欲心 貪欲の深い流れに沈んでしまうと浮かぶ瀬もないどうすればいいのか 瞋恚心 燃え出す瞋恚の炎で身を焼くと火の車になった自分に自分自身が乗るようなものだ 愚癡心 愚癡無知で何が正しいかわからずに僻むのはすべて同じ僻むということだ 一番目の貪欲の心が原因となって、すべての禍が起こる。この欲から自由でないために、鍼に関しても下手であると いう汚名を背負うことになる。 例えば、患者に向かい合い腹診をした時に、自分の心の中でこのようにすれば治るだろうという患者もいれば、治療 方法が心に浮かぶこともなく、どうすればいいかわからない患者も多くいる。 そのように、治療方法も思い浮かばず腹診も明確でないと、百日千日刺鍼したとしても、自分の心で納得できていな い場合は、治癒しないものである。そのような時は「他の医師に頼んで、ください」と言って、治療しないものである。ところが、自分でも十分納得していないけれど、患者が経済的に豊かな人か身分の高い人であると、治療方針はたっ ていないが、一通り刺鍼すれば、患者が死んだとしても治療代はもらえるだろうと思い、治療にかかる。 納得した治療でないので、当然治るはずもない。そうなればこの鍼師は下手で治療効果もあがらないと別の鍼師を頼 むことになる。 あるいは重病の患者でただ欲のために納得しないままに治療にかかると、病気は重くなり、ついには死んでしまう。 欲の心が強いばかりに、下手な鍼師という汚名を背負うことになる。 人間として生まれた限りは、まったく欲がないというわけにはいかないが、それほど強い欲を持ってはいけない。 心の中で欲の気持ちが強い時は、本来澄んでいるはずの心の鏡が曇らされてしまい患者の病状が心の鏡にまったく映 らなくなってしまう。 そうなると生死の行方や病証の善し悪しも判断できなくなる。欲の炎が激しくなければ、心が澄み、曇りない秋の月 のような、あるいはくっきりとした鏡のような心境で、病気の善し悪しや生死の行方が、心に浮かんでくるものである。これが三つの清浄の第一である。 第二に、瞋恚の気持ちが心にある時は、第一の場合と同じように心の鏡が曇ってしまう。瞋恚の気持ちは愚かな気持ち から生じるが、それは元々自分というものがあると考えるからである。私たちはこの世に生まれてくる時、木火土金水 の五行と陰陽の二つを借りている。すべては借り物である。身体の中の五臓六腑、五行に属しているとされるものは 借りているのであって死ぬ時にはそれらを一つ一つ元に返すことになる。 そのように考えると、元々自分というものはない。あるいは、千万年も自分というものが続いていくのだと期待するの も、間違いである。次のような歌がある。 地水火風が集まってできている本来空虚な自分を確かな「自分」だと思い間違ってしまうと[……] 生きているのはごくわずかな時間の間のことであって焼いてしまえば灰になり埋めてしまうと土になるのだから元々 自分というものはないのだ。 洪水の前に流れる栃殻も身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあるというものだというようなわけで「我」つまり自分というもの を捨て、無我の心境になる時は、怒る気持ちも他人を恨む気持ちもなくなる。 自分というものがあると思うから、人を恨む気持ちや怒る気持ち、あるいは欲というものが出てくる。 このように本来のあり方がわかっていないと、愚癡の闇に迷い、色欲の道に溺れ、さまざまなものに執着し心を奪われ、自分に対立する者を恨み怒る。身分の高い人や金持ちには媚びへつらい金品を手に入れようとし、身分の低い者や貧し い者に無関心なのを「襟につく虱根性」という。大愚癡から生じるこのような気持ちが少しでもあ、るようでは、病気 を治すということなど思いもよらない。身分の高い人にも媚びへつらわず、身分の低い人を避けず金持ち・貧乏の分け 隔てなくただ病苦を救おうとひたすら思う慈悲の心が強く純真無垢で邪な欲とは無縁な心境でいれば、それはもうその まま仏と同じ心境なわけで、天道仏神のご加護があり、その治療技術も自然とすばらしいものになる。 次のような歌がある。 慈悲・仏・正直は[一言で言えば]神だと言える 間違った考えの人が元々一つの心の状態を別々の三つのものだと 言っているのだ この歌の意味を十分理解し、貪ろうとする気持ちを捨て、無欲の心境になろうとする。いや、十のうち十まで無欲無我 にならなくても、その半分でも純粋な気持ちでいれば、病気を治せることは疑いない。 貪欲・瞋恚・愚癡の三つの邪念がなくなると、心は純粋で清浄である。このことから、心を清浄に保つことを三つの 清浄と言う。この心境の重要性は、さまざまな芸道にも共通することである。特に神へ参詣する際には、身体を清める というのは二の次のことで、心を清浄にするということがまず大切なことである。 心が清浄であればその人の「神」も清浄であるために、向かい合う神も清い思いですべてを受けとめて下さる [次のような例がある] 昔、栂尾の明慧上人と笠置の解脱上人という二人の名僧がいた。春日大明神はお二人をご自分の両目・両腕のように お思いであったが、明慧上人が参詣する時は、御簾を上げ、直接対面されてお話をされ、解脱上人が参詣する時は、 御簾ごしにお話された。ある日、解脱上人が参籠した時に春日大明神に次のように申し上げた。 「神(大明神)とお呼びしている方は、仏が姿を変えて現れたものです。仏と言えば、降る雨が草木国土をもらさず 潤すように、何者にも平等に隔てというものがないはずです。 ところが、明慧上人と私との間に特別の違いがあるはずもないのに、明慧上人が参詣する時は直接対面なされ、私が 詣でた時は御簾を隔ててお話なさるのは、私には納得できないことです」と。 大明神は次のようにお答えになった。 「私に二人を区別するような気持ちがあるはずもない。おまえがそのように思うことが、御簾を『隔て』と感じさせて いるのだ」と。これは、解脱上人の心の中に、慢心した「自分」というもの、つまり我があっ。たというとであった。 また別の例として、昔、美濃の国の加納の城に、於伊茶という女がいた。その母が重い病気で苦しんでいた於伊茶は 嘆き悲しみ関という所の龍泰寺の全石という僧を呼び、祈祷として陀羅尼を唱えてもらった。 全石が一心不乱に陀羅尼を唱え続けていると、病の母親が頭を上げ、「ああ、うれいしことだ。このごろ胸の中に苦痛 があり悲しかったが、お経の力で苦しくなくなった」とこの上なく喜んだ。 その時、全石の心の中に、「それでは、お布施をもらい帰るころあいか。それとも、もうしばらくとどまった方がよい か」という思。いが浮かんだ。とすると、その時母親が「やれやれ、また悲しくなって、心が苦しくなる」と言う。 全石はその言葉を聞き、これは私に欲の心が出てきたからだと思い、先ほどまでのように一心不乱に陀羅尼を唱えた。 すると、母親の病気も次第に軽くなり、ついには全治したということだ。この話も、自分の心の清浄と不清浄との違い が、事の善し悪しとなってあらわれるということを意味している。 ところで、患者に向かった時に、臆病になってしまう人がいる。技術が未熟な人は、どうしても気持ちが動転しやすい。不動明王の背中にある伽婁羅炎は心火をあらわしている。その炎の中に坐っていらっしゃる不動明王の姿は、人々の 動じない心を体現なさっておられる。どのような芸道でも、不動の姿とならなければ、その技を究めたとは言えない。 次のような歌がある。 鳴子を自分の羽が巻き起こす風で鳴らしておきながら動揺する村雀であることよ この段の内容を十二分に心に銘じ、修練するべきである。ここで述べた心の持ち方が最も大切なことである。 以上 ◎水面に映る月、月は患者、水は我なり。 水が濁っていては本当の月は映らない。 水が揺れていては月は定まらない。 輝 最後にお臍で診る脈をご紹介をしてお腹のみかた触れ方を終えます。 お臍で診る脈があります。夢分流が行っていたやり方です。 参考までに載せておきます。 四つの脈 ①動気:遅くないテンポでトントントンと打つ。(一般でいう平脈のこと) ②動気の乱れ: 平脈の中に途切れがある。トントントン、 トントントンと途切れる。 病気でない人は災難に会う。 ③相火: トントントンと早く打つ脈。病人の脈。 ④ 相火の乱れ:上記の脈の中に途切れがある。死脈。 いかがでしょう。参考になったでしょうか。 詳しくは、久次米晃先生のホームページ 「東洋医学論」をご覧になって下さい。 ぜひ、お腹整体を当スクールで学んで下さい。(*´▽`*) 苦しんでおられる方々のために少しでも力になれたら人生でこんな嬉しいことはありません。 ![]() |
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