東洋医学
東洋医学とは
定義
古代中国を起源とする医学体系で、自然と人間の調和を重視する医療。
病気の原因や症状を「体全体のバランスの乱れ」としてとらえる。
西洋医学(病気の原因を病原体や臓器の異常として扱う)とはアプローチが異なる。
基本理念
全体観(ホリスティック)
体・心・環境を一体として考える。
未病(予防)
病気になる前にバランスを整えることが重要。
陰陽・五行
すべての現象は「陰と陽」のバランスで説明。
「木・火・土・金・水」の五行で体の働きや臓器の相互関係を理解。
東洋医学の主要な考え方
気(き)
体を動かすエネルギー。血や水分の流れも含む。
気の滞りが病気の原因になる。
血(けつ)
体を栄養する血液。気と密接に関係。
水(すい)
体液やリンパ液などの水分。血や気とバランスを保つ。
陰陽(いんよう)
陰:冷・静・内向的・夜など
陽:熱・動・外向的・昼など
健康は陰と陽のバランスで成り立つ。
五行(ごぎょう)
木・火・土・金・水の五つの元素で体の臓器・季節・感情・色などを関連付けて考える。
東洋医学で見る病気
原因の捉え方
気血水の不調や陰陽のバランスの乱れから病気が生じると考える。
例:冷えやストレスが気の流れを滞らせ、頭痛や胃痛になる。
診断方法(四診)
望診:見た目・顔色・舌の状態
聞診:声・呼吸・匂い
問診:体調・生活習慣・感情
切診:脈・お腹の触診
東洋医学の四診
1. 望診(ぼうしん:見る診断)
目的:外見や舌などの状態から体内のバランスや病気の兆候を判断する
主な観察ポイント:
顔色
赤い → 血熱、陽盛
蒼白 → 気血不足、陽虚
黄みがかる → 脾虚、湿(体内の余分な水分)
舌の状態
舌色:淡い、赤い、紫色などで血や気の状態を判断
舌苔:白い、黄色、厚い、べたつくなどで消化や湿熱の有無を判断
舌形:腫れている、ひび割れ、痩せているなどで臓腑の状態を推測
体型・姿勢・皮膚
むくみ、痩せ、しわ、肌の乾燥などで水分や血の状態を判断
動作や表情
動きが鈍い → 気虚
落ち着きがない → 心火旺など
2. 聞診(ぶんしん/ききしん:聞く診断)
目的:声や呼吸、体臭などの情報から体内の状態を判断
主な観察ポイント:
声の質
弱々しい → 気虚
甲高く強い → 気滞、肝火
小さくぼそぼそ → 心血虚
呼吸
速い → 陽盛や熱
遅い・弱い → 陰虚、陽虚
しゃっくりやげっぷ → 気逆
匂い
体臭:湿熱や瘀血などの異常のサイン
口臭:胃腸や肝の状態を示すこともある
3. 問診(もんしん:聞き取り)
目的:体調・症状・生活習慣・感情などを聞き、全身のバランスを評価
主な質問内容:
体調・症状
疲れやすい、冷え、頭痛、便通、食欲など
生活習慣
食事内容、睡眠、運動、仕事の負担
感情や心理状態
イライラ、憂うつ、不安など
東洋医学では感情と臓器が関連する(例:肝と怒り、心と喜び)
既往症や季節の影響
過去の病気、季節による体調変化
4. 切診(せっしん:触る診断)
目的:脈やお腹の状態など、触覚を通じて体内の異常を判断
主な観察ポイント:
脈診
脈の速さ、深さ、力強さ、緊張感などをチェック
例:浮脈(表証)、沈脈(裏証)、遅脈(寒)、数脈(熱)
腹診(お腹の触診)
張り、圧痛、冷え、硬さの有無で臓腑の異常を推測
例:みぞおちの張り → 胃気滞、下腹部の冷え → 脾陽虚
その他の触診
手足の温度、皮膚の湿りや乾燥、関節のこわばりなど
ポイント
四診は組み合わせて総合判断する
望診だけ、脈診だけでは不十分
望診+聞診+問診+切診で、体全体のバランスを評価
症状と感情、生活習慣との関連も強調すると理解しやすい
実際の診断では「微妙な違い」を丁寧に観察することが重要
東洋医学の養生法 (五臓に基づく)
肝(木)
伸びやかにリラックスすることが大事
運動や深呼吸で気血の巡りを良くする
怒りすぎない・ストレス解消
心(火)
睡眠・休養をしっかりとる
喜びを適度に持ち、過度な興奮を避ける
苦い味(苦味の食材)が養心に良いとされる
脾(土)
規則正しい食事、冷たいものを摂りすぎない
過度な思い悩みを避ける
甘味(穀物やイモ類など自然な甘味)が脾を補う
肺(金)
呼吸法・新鮮な空気を意識する
悲しみや憂いをため込まない
辛味(香辛料や薬味)が肺を助ける
腎(水)
過労や冷えを避け、体力を温存する
睡眠・休養を重視
黒い食材(黒豆・黒ゴマ・海藻など)が腎を補う
✅ ポイントまとめ
診察は四診(望・聞・問・切)の総合判断。
養生は五臓の働きを整えることを目的に、感情・食事・生活習慣を工夫する。
「内臓の健康=体表や感覚器の状態」に反映されるので、日常観察が大切。
東洋医学の食養生(五味・五色と五臓)
五味(味覚と臓腑の関係)
酸(すっぱい) → 肝を養う
働き:収斂・引き締め
例:梅、酢、レモン、山査子
注意:摂りすぎると肝を傷つけ、筋が硬直する
苦(にがい) → 心を養う
働き:清熱・火を冷ます・乾かす
例:苦瓜、セロリ、緑茶、蓮の葉
注意:摂りすぎると津液を傷つけ、やせすぎ・乾燥につながる
甘(あまい) → 脾を養う
働き:補益・調和・緩和
例:米・麦・イモ類・ナツメ・ハチミツ
注意:摂りすぎると湿を生じ、肥満・だるさの原因になる
辛(からい) → 肺を養う
働き:発散・行気・血行促進
例:ネギ、ショウガ、ニンニク、シソ
注意:摂りすぎると気を消耗し、乾燥を助長する
鹹(しおからい) → 腎を養う
働き:軟化・潤下(柔らかくする・下ろす)
例:海藻、貝類、味噌、醤油
注意:摂りすぎると腎を損ない、むくみ・血圧上昇につながる
五色(色と臓腑の関係)
青(緑) → 肝
例:ほうれん草、ブロッコリー、ニラ、青菜類
赤 → 心
例:トマト、イチゴ、赤ピーマン、クコの実
黄 → 脾
例:カボチャ、トウモロコシ、サツマイモ、大豆
白 → 肺
例:大根、梨、白きくらげ、百合根
黒 → 腎
例:黒豆、黒ゴマ、海藻、黒米
✅ ポイントまとめ
五味は臓腑を補うが、摂りすぎは逆効果。バランスが大切。
五色の食材をまんべんなく食べることで、五臓の調和を助ける。
季節や体質に合わせて食材を選ぶのが養生の基本。
治療のアプローチ
体全体のバランスを整えることが中心
主な方法:
鍼灸(しんきゅう):ツボに刺激を与え気血水の流れを整える
漢方薬(生薬):自然の植物・鉱物を使い体質や症状を調整
整体・指圧・マッサージ:体の気血の流れを改善
食養生:食材の性質を考え、体質に合った食事で調整
気功・太極拳:呼吸と運動で気の流れを整える
東洋医学の特徴
体全体を見て「原因を未然に防ぐ」予防医学的な側面が強い
西洋医学のように即効性を求める治療よりも、生活習慣の改善や体質改善が中心
心身の健康を一体として考える
東洋医学で病気を見る基本的な考え方
病気は「体のバランスの乱れ」から起こる
気・血・水の不足や滞り
陰陽の偏り
五行の関係の不調和
病気の種類(東洋医学的分類)
気の異常(気虚・気滞・気逆など)
気虚:エネルギー不足 → 疲れやすい、息切れ、声が小さい
気滞:気の流れが滞る → イライラ、胸の張り、消化不良
気逆:気が逆流 → 吐き気、しゃっくり、頭痛
血の異常(血虚・血瘀・血熱など)
血虚:血が不足 → 顔色が悪い、めまい、冷え、月経不順
血瘀:血の流れが滞る → しびれ、痛み、あざができやすい
血熱:血が熱を帯びる → 鼻血、皮膚の赤み、炎症
水の異常(津液異常・水滞など)
水滞:体液が滞る → むくみ、関節の腫れ、だるさ
水寒:水が冷えて滞る → 手足の冷え、下痢、関節の痛み
陰陽の偏り
陰虚:体の冷やす力が不足 → ほてり、のぼせ、夜間の寝汗
陽虚:体を温める力が不足 → 冷え、疲れやすい、下痢傾向
陰陽の不調和 → 全身の不調、慢性疾患の原因になりやすい
五行の失調
五行(木・火・土・金・水)の対応関係が乱れる
例:
肝(木)が弱い → イライラ、目の充血、肩こり
脾(土)が弱い → 食欲不振、下痢、むくみ
心(火)が弱い → 不眠、動悸、精神不安定
病気の診断の考え方
望診(見た目):顔色、舌、皮膚、姿勢
聞診(聞く):声、呼吸、匂い
問診(聞く):体調、食習慣、感情、生活環境
切診(触る):脈、腹部、ツボの状態
全身の状態から病気の原因を特定
単なる症状ではなく「体のどのバランスが崩れたか」を見る
体質や季節・環境・感情も原因として重要
病気を理解する例
慢性疲労
気虚(エネルギー不足)+血虚(栄養不足)
頭痛
気滞、血瘀、肝火の上昇などさまざまなパターン
むくみ
水滞(体液循環の停滞)、脾陽不足(体を温められない)
ポイント
東洋医学では同じ症状でも原因(体のバランスの乱れ)は人によって異なる
治療は症状だけでなく、「原因となるバランスの乱れ」を整えることが中心
東洋医学:症状と原因
疲れやすい、息切れ
原因:気虚(気の不足で体の活動力が低下)
顔色が悪い、めまい
原因:血虚(血が不足し全身に栄養が行き渡らない)
冷え、手足の冷たさ
原因:陽虚 / 水滞(体を温める力不足、体液循環の停滞)
のぼせ、ほてり、夜間の寝汗
原因:陰虚(体を冷やす陰の不足で熱がこもる)
肩こり、イライラ、目の充血
原因:肝気鬱 / 肝火上炎(肝の気の流れが滞る、熱が上にのぼる)
消化不良、食欲不振、下痢
原因:脾虚 / 水滞(脾の働き不足、水の滞り)
動悸、不眠、精神不安定
原因:心血虚 / 心火旺(心の血不足または火の偏り)
しびれ、痛み、あざができやすい
原因:血瘀(血の流れが滞る)
むくみ、関節の腫れ、だるさ
原因:水滞(体液循環の停滞)
吐き気、しゃっくり、頭痛
原因:気逆(気の流れが逆流)
鼻血、皮膚の赤み、炎症
原因:血熱(血に熱がこもる)
ポイント
症状と原因は一対一ではなく、複数の原因が重なることもある
「症状→原因→改善方法」の流れを理解しましょう。
東洋医学:症状別・原因と改善例
疲れやすい、息切れ
原因:気虚(気の不足で体の活動力が低下)
改善例:
鍼灸:足三里・気海などのツボ刺激
漢方:人参養栄湯、補中益気湯
食事:にんじん、山芋、鶏肉などで気を補う
顔色が悪い、めまい
原因:血虚(血が不足し全身に栄養が行き渡らない)
改善例:
鍼灸:血海・三陰交
漢方:当帰芍薬散、八味地黄丸
食事:ほうれん草、レバー、黒ごまで血を補う
冷え、手足の冷たさ
原因:陽虚 / 水滞(体を温める力不足、体液循環の停滞)
改善例:
鍼灸:命門、関元
漢方:附子理中湯、真武湯
食事:生姜、ねぎ、鶏肉、羊肉で体を温める
のぼせ、ほてり、夜間の寝汗
原因:陰虚(体を冷やす陰の不足で熱がこもる)
改善例:
鍼灸:肝兪、腎兪
漢方:六味地黄丸、知柏地黄丸
食事:梨、きゅうり、豆腐、緑茶で体を冷やす
肩こり、イライラ、目の充血
原因:肝気鬱 / 肝火上炎(肝の気の流れが滞る、熱が上にのぼる)
改善例:
鍼灸:太衝、合谷
漢方:柴胡加竜骨牡蛎湯、竜胆瀉肝湯
食事:青菜、苦味野菜、緑茶で肝を整える
消化不良、食欲不振、下痢
原因:脾虚 / 水滞(脾の働き不足、水の滞り)
改善例:
鍼灸:足三里、中脘
漢方:六君子湯、参苓白朮散
食事:米、かぼちゃ、山芋で脾を補う
動悸、不眠、精神不安定
原因:心血虚 / 心火旺(心の血不足または火の偏り)
改善例:
鍼灸:心兪、神門
漢方:酸棗仁湯、天王補心丹
食事:クルミ、ナッツ、黒豆で心を養う
しびれ、痛み、あざができやすい
原因:血瘀(血の流れが滞る)
改善例:
鍼灸:血海、三陰交
漢方:桃核承気湯、血府逐瘀湯
食事:黒豆、なつめ、レバーで血流を改善
むくみ、関節の腫れ、だるさ
原因:水滞(体液循環の停滞)
改善例:
鍼灸:陰陵泉、三陰交
漢方:五苓散、防已黄耆湯
食事:冬瓜、きゅうり、豆類で水の代謝を促す
吐き気、しゃっくり、頭痛
原因:気逆(気の流れが逆流)
改善例:
鍼灸:中脘、内関
漢方:半夏厚朴湯、香蘇散
食事:生姜、温かいスープで気の流れを整える
鼻血、皮膚の赤み、炎症
原因:血熱(血に熱がこもる)
改善例:
鍼灸:合谷、曲池
漢方:黄連解毒湯、涼血地黄丸
食事:緑豆、白菜、苦味野菜で血の熱を冷ます
ポイント
講義では「症状→原因→改善方法」の順で説明すると、参加者が理解しやすい
食事や生活習慣は即効性は少ないが、日常での予防・改善に役立つ
東洋医学五色体表(五行対応表)
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五行
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五臓
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色
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季節
|
味
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感情
|
五官
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体の部位
|
気血水との関連
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木
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肝
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青・緑
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春
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酸
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怒
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目
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筋・爪・肢
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気の流れ、疏泄作用
|
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火
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心
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赤
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夏
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苦
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喜
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舌
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血脈・顔
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血液循環、精神活動
|
|
土
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脾
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黄
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長夏(梅雨)
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甘
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思
|
口
|
筋肉・口唇
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消化・水分代謝
|
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金
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肺
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白
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秋
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辛
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悲
|
鼻
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皮膚・毛
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呼吸・皮膚の防御
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水
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腎
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黒
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冬
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鹹(塩味)
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恐
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耳
|
骨・髪
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水分代謝・腎精保存
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補足説明
五臓:肝・心・脾・肺・腎
色:五行ごとに対応する色(体表の顔色や舌色にも関係)
季節:五行は季節と対応しており、体調管理に応用可能
味:食材や漢方で五臓を補ったり調整する際の指標
感情:臓器と感情が関係していると考える(例:肝=怒)
五官:各臓器が支配する感覚器官
体の部位:臓器と関連する体の部位
気血水との関連:臓器の働きと気・血・水の流れや調整作用
五臓六腑と五色体表
五臓六腑
五臓 → 陰に属し、生命活動の根本を保持・調整
肝(木):気血の巡り・蔵血/目・筋・爪/怒
心(火):血脈・精神活動/舌・脈/喜
脾(土):消化吸収・気血生成/口・肌肉/思(憂慮)
肺(金):呼吸・気の調節・水分代謝/鼻・皮毛/悲
腎(水):精を蔵す・成長・生殖・水代謝/耳・骨・髪/恐
六腑 → 陽に属し、飲食物の受納・消化・排泄
胆:胆汁を貯蔵・排出、決断を助ける(肝と対応)
胃:飲食物を受納・消化(脾と対応)
小腸:清濁を分ける(心と対応)
大腸:糟粕を伝導・排泄(肺と対応)
膀胱:尿を貯蔵・排泄(腎と対応)
三焦:上中下を分け、気・水液の通路を司る(特殊な腑)
五色体表
五臓と体表(顔色・感覚器・組織・体液)を対応させる
肝:青/目/筋/涙
心:赤/舌/血脈/汗
脾:黄/口/肌肉/涎(よだれ)
肺:白/鼻/皮毛/涕(はなみず)
腎:黒/耳/骨・髪/唾
✅ ポイントまとめ
五臓六腑は「陰陽五行」に基づく独自の臓腑システム(西洋医学の臓器とは異なる)。
五色体表は内臓と外見(顔色・感覚器・組織・分泌物)を結びつける。
診断(望診など)や養生法に応用される。
季節ごとの養生(五季と五臓の対応)
季節の養生(五季と五臓)
春(木 → 肝)
特徴:陽気が伸び始め、万物が成長する季節
養生の要点:
伸びやかに過ごし、ストレスを溜めない
夜更かしを避け、朝は早めに起きて外気を浴びる
酸味(梅・酢・柑橘)を少し控えめにし、甘味で調和する
適度な運動やストレッチで気血の流れを助ける
夏(火 → 心)
特徴:陽気が最も盛んで、汗をかきやすい季節
養生の要点:
睡眠を十分にとり、昼寝も良い
苦味(ゴーヤ・セロリ・緑茶)で熱を冷ます
冷たいものの摂りすぎは脾胃を傷めるので注意
笑いや楽しみを持ち、心を安らげる
長夏(土 → 脾)※梅雨・夏の土用
特徴:湿気が多く、消化器に負担がかかりやすい季節
養生の要点:
暑湿に注意し、消化の良い食事を心がける
甘味(穀物・芋類)で脾を補う
冷たい飲食を控える
適度な運動で体内の湿を散らす
秋(金 → 肺)
特徴:乾燥が強まり、肺・皮毛が影響を受けやすい季節
養生の要点:
辛味(ネギ・生姜)で発散し、白い食材(梨・大根・百合根)で潤す
乾燥を防ぐために加湿や潤いのある食事を心がける
深呼吸・呼吸法で肺を養う
感傷的になりすぎないよう心を安定させる
冬(水 → 腎)
特徴:寒気が強まり、陽気が内に閉じこもる季節
養生の要点:
早寝遅起きで体力を温存
黒い食材(黒豆・黒ゴマ・海藻)で腎を補う
激しい発汗を避ける(陽気の消耗につながる)
静かに過ごし、英気を養う
✅ 季節養生まとめ
春=肝 → のびやかに
夏=心 → 笑顔と休養
長夏=脾 → 湿を避ける
秋=肺 → 潤いを守る
冬=腎 → 温存し静かに
東洋医学まとめ(五臓六腑・五色体表・診察法・養生)
五臓六腑
五臓(陰・エネルギー保持)
肝(木):気血の巡り/目・筋・爪/怒
心(火):血脈・精神活動/舌・脈/喜
脾(土):消化吸収・気血生成/口・肌肉/思
肺(金):呼吸・気・水分代謝/鼻・皮毛/悲
腎(水):精・成長・生殖・水代謝/耳・骨・髪/恐
六腑(陽・消化・排泄)
胆:胆汁を貯蔵・排出(肝と対応)
胃:飲食物を受納・消化(脾と対応)
小腸:清濁を分ける(心と対応)
大腸:排泄(肺と対応)
膀胱:尿を貯蔵・排出(腎と対応)
三焦:気・水液の通路を司る(特殊な腑)
五色体表(内臓と体表の対応)
肝:青/目/筋/涙
心:赤/舌/血脈/汗
脾:黄/口/肌肉/涎
肺:白/鼻/皮毛/涕
腎:黒/耳/骨・髪/唾
診察法(四診)
望診:顔色・舌・体格・皮膚を観る
聞診:声・呼吸音・体臭を聴く/嗅ぐ
問診:食欲・睡眠・便通・感情を問う
切診:脈診・触診
養生法(五臓)
肝:ストレス解消・伸びやかに
心:睡眠・休養・笑い
脾:規則正しい食事・冷たい物控える
肺:深呼吸・乾燥予防・悲しみを溜めない
腎:冷えと過労を避ける・黒い食材
食養生(五味・五色)
五味
酸→肝/梅・酢
苦→心/苦瓜・緑茶
甘→脾/穀物・芋類
辛→肺/ネギ・生姜
鹹→腎/海藻・味噌
五色
青(緑)→肝
赤 →心
黄 →脾
白 →肺
黒 →腎
季節 養生(五季と五臓)
春=肝 → のびやかに・運動・酸味控えめ
夏=心 → 睡眠・苦味で熱を冷ます
長夏=脾 → 湿を避け・消化を助ける
秋=肺 → 潤いを守り・呼吸を整える
冬=腎 → 温存・黒い食材・静養
✅ ポイント:
五臓六腑=陰陽五行の臓腑システム(西洋医学とは別概念)
五色体表=内臓と体表・感覚器・体液の結びつき
診察=四診(望・聞・問・切)の総合判断
養生=食事・感情・生活を五臓に合わせて整える
食養生=五味・五色をバランス良く
季節養生=春肝・夏心・長夏脾・秋肺・冬腎
東洋医学の全体像の整理
東洋医学の全体像
1. 基盤となる思想
陰陽論
万物は「陰」と「陽」の二つの性質から成り立つ
陰=静・寒・内・物質 / 陽=動・熱・外・エネルギー
陰陽のバランスが健康を決める
五行説
木・火・土・金・水の五つの要素が自然・人体を構成
「五臓」「五味」「五色」などに応用される
五行は「相生(助け合う)」と「相克(抑制し合う)」の関係で循環
2. 生命活動の根本
気:生命エネルギー(推動・温煦・防御・固摂・気化)
血:体を滋養し潤す物質
津液:体内の正常な水分(汗・涙・唾液など)
健康=気・血・津液が調和し、滞りなく巡る状態
3. 臓腑の概念
五臓六腑(前回まとめ)
五臓=陰のはたらき(エネルギー保持)
六腑=陽のはたらき(消化・排泄)
西洋医学の解剖的な臓器とは異なり、機能的・概念的なまとまり
4. 診察と診断
四診合参(望・聞・問・切)で全体を観察
舌や脈、顔色・声・感情などから、気血のバランスや五臓の状態を判断
5. 治療と養生
治療法
鍼灸(ツボ刺激で気血の巡りを整える)
漢方薬(体質や症状に応じた処方)
整体・指圧・按摩(経絡を刺激)
養生法
生活・食事・感情を五臓に合わせて調整
五味五色の食養生、季節ごとの養生
✅ 東洋医学の特徴
全体観:体を臓器ごとではなく、全体のバランスとしてとらえる
個別性:同じ病名でも、人によって治療が異なる(弁証論治)
予防重視:病気にならないように体を整える(未病を治す)
自然との調和:季節や環境と体を対応させる
簡潔にまとめると、
東洋医学は「陰陽五行」を基盤に、気・血・津液の調和を重視し、全体のバランスを観ながら、診断・治療・養生を行う医学体系です。
東洋医学の大きな柱のひとつである経絡とツボ(経穴)について
経絡とツボ(経穴)
1. 経絡とは
気血が流れる通路(人体をめぐるネットワーク)
全身をつなぎ、臓腑と体表・手足・感覚器を結びつける
働き:
気血を全身に運ぶ
臓腑と体表をつなぐ
体内外の情報を伝える(外邪の侵入や内臓の不調が体表に表れる)
経絡に異常があると → 痛み・しびれ・冷え・臓腑の不調に影響
2. 十二正経(じゅうにせいけい)
12本の基本的な経絡
各経絡は五臓六腑と対応
十二正経
手の太陰肺経(肺) … 胸 → 手
手の陽明大腸経(大腸) … 手 → 顔
足の陽明胃経(胃) … 顔 → 足
足の太陰脾経(脾) … 足 → 胸
手の少陰心経(心) … 胸 → 手
手の太陽小腸経(小腸) … 手 → 顔
足の太陽膀胱経(膀胱) … 顔 → 足
足の少陰腎経(腎) … 足 → 胸
手の厥陰心包経(心包) … 胸 → 手
手の少陽三焦経(三焦) … 手 → 顔
足の少陽胆経(胆) … 顔 → 足
足の厥陰肝経(肝) … 足 → 胸
3. 奇経八脈(きけいはちみゃく)
十二正経を補い、全身のバランスを整える特別な経絡
例:督脈(背中の正中を通る)・任脈(お腹の正中を通る)など
4. ツボ(経穴)
経絡上に存在する「気血の出入り口」
約360カ所(正穴)ある
特徴:
押すと痛みや反応が出やすい
鍼灸・指圧で刺激することで、経絡の流れを整える
種類:
原穴(臓腑の気が集まる)
兪穴(背中にあり臓腑と関係)
募穴(お腹にあり臓腑と関係)
五兪穴(井・滎・兪・経・合の五種類の性質を持つ)
5. 有名なツボの例
合谷(ごうこく/手の甲の親指と人差し指の間)→ 頭痛・肩こり・歯痛
足三里(あしさんり/膝の下外側)→ 胃腸虚弱・疲労回復
太衝(たいしょう/足の甲、親指と人差し指の間)→ 肝の調整・ストレス
三陰交(さんいんこう/内くるぶしの上)→ 婦人科疾患・冷え
百会(ひゃくえ/頭頂部)→ 自律神経調整・不眠・頭痛
✅ ポイントまとめ
経絡=気血のネットワーク、臓腑と体表を結ぶ
十二正経=五臓六腑に対応
奇経八脈=全体のバランスを補助
ツボ=経絡の気血が集まる要所、鍼灸や指圧で調整可能
✅ ポイント:
「手の経絡」は胸から手、または手から顔へ流れる。
「足の経絡」は顔から足、または足から胸へ流れる。
各経絡は必ず対応する臓腑(五臓六腑)と結びついている。
東洋医学は概念が抽象的で、「気・陰陽・五行」などが初心者には分かりにくく感じられがちです。ですので、初めてに学ぶ人へ伝えるときは、イメージや日常生活との結びつきを大切にすると理解が深まります。
東洋医学セルフチェック
1. 今日の体調チェック
顔色:赤・青・黄・白・黒
舌の色:ピンク・赤・白・苔あり/なし
目・皮膚・髪:乾燥・つや・ハリ
気分:怒・喜・思・悲・恐
体のだるさ・冷え:背中・手足・全身
2. 五臓チェック(体のサインとセルフケア)
肝:目の疲れ・肩こり・イライラ → 深呼吸・ストレッチ・酸味控えめ
心:不眠・動悸・気分浮き沈み → 睡眠・休養・苦味の食材
脾:食欲不振・下痢・疲れやすい → 消化の良い食事・甘味で補う
肺:咳・乾燥・鼻づまり → 呼吸法・加湿・辛味で気を巡らす
腎:冷え・腰痛・疲れやすい → 黒い食材・温める・休養
3. 食養生チェック
食材を色分け・味分けして記録
色・味・対応臓腑を簡単にメモする
例:ほうれん草 → 青・甘・肝
例:トマト → 赤・甘・心
4. 季節養生チェック
春(肝):運動・ストレッチ・酸味控えめ
夏(心):十分な休養・苦味で熱を冷ます
長夏(脾):消化の良い食事・湿気対策
秋(肺):潤いを守る・呼吸法・辛味で発散
冬(腎):温める・黒い食材・静養
5. 経絡・ツボセルフケア
合谷(手の甲) → 頭痛・肩こり
足三里(膝下外側) → 疲労回復・胃腸調整
太衝(足の甲) → ストレス・肝の調整
1日1~2分、軽く押して体の変化を観察
6. 使い方のポイント
朝・昼・夜など日々の体調を観察してチェック
食事や感情の記録を簡単にメモ
気になる臓腑のセルフケアを取り入れる
1週間~1か月続けて、自分の体質や変化を把握
東洋医学で非常に重要な舌診(ぜっしん)について詳しく整理し、初心者でも理解しやすいように段階的にまとめます。
東洋医学における舌(舌診)
舌は「体の状態を映す鏡」と考えられ、五臓六腑や気血の状態を観察する重要な診断ツールです。
1. 観察するポイント
舌診では以下の要素を観察します。
(1) 舌の色
淡白(青白) → 気血不足、冷え、腎や脾の弱り
紅(赤) → 体内に熱がある、心・小腸の火が旺盛
淡紅(ピンク) → 健康な状態
暗紅(紫・黒っぽい赤) → 血行不良、瘀血、肝のうっ血
(2) 舌の形・大きさ
薄く小さい → 気血不足、脾虚
腫れて厚い → 水分代謝不良、脾の湿気過多
裂けている → 陰虚(体液不足)、熱がこもっている
痩せてしぼんでいる → 脾腎の虚、栄養不足
(3) 舌苔(ぜったい)の状態
薄白苔 → 健康な状態
厚白苔 → 寒湿、消化不良、胃腸の負担
黄苔 → 体内熱、湿熱、炎症
黒苔 → 重度の熱、瘀血、体力消耗
剥離苔(はがれ苔) → 胃陰虚、津液不足
(4) 舌の湿り気
潤いがある → 体液が充実している
乾燥している → 津液不足、体内熱
(5) 舌の動き
震える・よろめく → 気血不足、心や肝の影響
動きが鈍い → 気滞、血行不良
2. 五臓との関係
舌の部分ごとに五臓との対応があります。
3. 舌診の実際のポイント
舌は朝起きたときに観察すると分かりやすい
舌を出すときは自然に、力を入れずに観察
顔色や唇の色と併せて観察すると精度が上がる
舌診だけで判断せず、脈診や症状と合わせる
4. 舌診でわかること
気血の状態:虚・実・瘀血の有無
津液の状態:体内の潤い不足や水分過多
寒熱の状態:体内の冷えや熱の傾向
臓腑の不調:心・肝・脾・肺・腎のバランス
✅ ポイントまとめ
舌は「内臓の鏡」として、色・形・苔・湿り・動きで診断する
舌診は五臓の状態・気血・津液・寒熱を判断する重要な手段
日常的に自分の舌を観察すると、体調変化の早期発見にもなる
舌診チェックリスト
1. 舌の色
□ 淡白(青白) → 気血不足・冷え・腎や脾の弱り
□ 淡紅(ピンク) → 健康状態
□ 紅(赤) → 体内熱・心火・小腸火旺
□ 暗紅(紫・黒っぽい赤) → 血行不良・瘀血・肝のうっ血
2. 舌の形・大きさ
□ 薄く小さい → 気血不足・脾虚
□ 厚く腫れている → 水分代謝不良・脾の湿気
□ 裂けている → 陰虚・体液不足・熱がこもる
□ 痩せてしぼんでいる → 脾腎虚・栄養不足
3. 舌苔(ぜったい)の状態
□ 薄白苔 → 健康
□ 厚白苔 → 寒湿・消化不良
□ 黄苔 → 体内熱・湿熱・炎症
□ 黒苔 → 重度の熱・瘀血・体力消耗
□ 剥離苔 → 胃陰虚・津液不足
4. 舌の湿り気
□ 潤いがある → 体液充実
□ 乾燥している → 津液不足・体内熱
5. 舌の動き
□ 震える・よろめく → 気血不足・心や肝の影響
□ 動きが鈍い → 気滞・血行不良
6. 舌の部位と五臓対応
舌先 → 心(赤すぎ・裂け・動き)
舌中央 → 脾・胃(腫れ・厚苔)
舌両側 → 肝(紫・青・歯痕)
舌裏 → 腎(紫・腫れ・静脈の状態)
舌根元 → 膀胱・腎(黒っぽく湿る)
7. 舌診チェックのポイント
朝起きたときに観察
自然に舌を出す(力を入れない)
顔色・唇の色と併せて観察
舌診だけでなく、脈診や症状と合わせて判断