東洋医学ってなあに?

十四経発揮

 
 
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Q東洋医学について初心者でも分かるように詳しく丁寧に教えて下さい。
A はじめての方でもスッと入れるように、東洋医学(主に中国伝統医学・漢方・鍼灸)の全体像をやさしく
整理してお伝えします。

体質とバランスを重視する医学体系。症状そのものよりも「なぜ崩れたか(原因と体質)」を見て整えます。
西洋医学が「病名→標準治療」に強いのに対し、東洋医学は「体質・状態(証 しょう)→整える方法」を選ぶ
のが得意。
日本では漢方(医師の保険診療でも使われる)、鍼灸(国家資格)、あん摩・指圧などが代表的です。

基本の考え方
気・血・水(き・けつ・すい)
気:エネルギーや働き
血:栄養やうるおいを運ぶ
水:体液・むくみのコントロール
→ どれが不足/滞り/逆走しているかを見ます。

陰陽(いんよう)
陰=冷やす・潤す・休む、陽=温める・動かす・盛ん
→ 「冷えすぎ」「熱すぎ」「休み不足」などの偏りを整える。

五行(ごぎょう)
木・火・土・金・水:体のはたらきを5つのグループに整理したフレーム。
例)「土」は消化吸収、「金」は呼吸と皮膚、などの関連として使います。
臓腑(ぞうふ)(東洋医学での臓器観)
例)「肝」は感情・気のめぐり、「脾」は消化と水分代謝…といった“機能のまとまり”を指す用語で、解剖学の
肝臓・脾臓と完全一致ではありません。

経絡(けいらく)
気血が巡る「通り道」。ツボ(経穴)はこの線上のポイントです。

どうやって診るの?(弁証論治 べんしょうろんち)
東洋医学は「証(いまの体の状態像)」を立て、それに合わせて治し方を決めます。診かたは大きく4つ:
望診:顔色・皮膚・舌(舌診)を観察。舌の色・苔(こけ)・形で“熱”“冷え”“水分”などを推測。
聞診:声の調子・体臭・呼吸音などをきく/感じる。
問診:睡眠、食欲、便通、冷え/のぼせ、月経、ストレスなどを細かく聞く。
切診:触れて確かめる。代表は脈診(脈の強さ・速さ・弾力)や腹診。

主な治療法
漢方(生薬の処方)
体質・証に合わせて「方剤(ほうざい)」を選ぶ。
例)風邪のひき始めの悪寒・首肩こり→葛根湯、花粉・水っぽい鼻水→小青竜湯、めまい・むくみ→五苓散、気分の落ち込み・イライラ→加味逍遙散、のどのつかえ→半夏厚朴湯…など(あくまで一般例)。
鍼(はり)・灸(きゅう)
ツボを刺激して気血の巡りを整え、痛み・自律神経・消化・睡眠などの不調にアプローチ。
お灸は熱刺激で「冷え」「慢性のこり」などを温めるのが得意。
手技療法(あん摩・指圧・推拿 すいな)
こり・血行・可動域・自律神経の調整をねらう。
カッピング(吸い玉)・刮痧(かっさ)
滞りを流す目的。皮膚に痕が残ることがあります。
気功・太極拳・養生(ようじょう)
呼吸・姿勢・緩やかな運動で「自分で整える」柱。睡眠・食事・入浴・休息の工夫も含みます。
具体例でイメージ
同じ“頭痛”でも人によって治し方が違う
こめかみがズキズキ・ストレス過多→「肝」の気が上衝(のぼる)タイプ:巡らせて降ろす方針。
重だるい・雨で悪化→水の滞りタイプ:余分な水をさばく方針。
乾燥・寝不足でふらつく→血不足タイプ:血を補い休む方針。
→ 病名より「体質×原因×現状」に合わせて道具(漢方・鍼灸など)を組み合わせます。

家でできる“やさしい養生”
睡眠:23時までに就床を目標(陰を養う時間)。寝る2–3時間前のスマホ・カフェインを控える。
食事:冷たい飲食の摂り過ぎに注意。温かい汁物・根菜・発酵食品を基本に。食べ過ぎ/遅い時間の食事は「脾(消化)」を弱らせます。
体を冷やさない:お腹・腰・足首を温かく。入浴はぬるめで10–15分。
ほどよく動く:毎日15–30分のゆっくり散歩やストレッチ。呼吸を長く吐く。
簡単ツボ押し(各30秒〜1分、痛気持ちいい強さで)
合谷(ごうこく):手の甲、親指と人差し指の合流部のくぼみ。肩こり・頭重感に。
足三里(あしさんり):膝下の外側。胃腸の疲れ・全身倦怠。
内関(ないかん):手首のしわから指3本分、中央。胸のつかえ・不安・乗り物酔い。
太衝(たいしょう):足の甲、親指と人差し指の骨の間。イライラ・頭ののぼせ。
※ 妊娠中は強い刺激を避け、専門家に相談してください。

受診のイメージ
漢方:医師が診断し、エキス製剤が処方されることあり(保険適用の場合あり)。
鍼灸・あん摩:国家資格の有資格者が施術。初回は問診・舌脈腹診→施術→生活アドバイスの流れが一般的。
選び方の目安:
資格の有無(医師、はり師・きゅう師、あん摩マッサージ指圧師)。
どういう訴えにどんな方針を取るか説明が明確。
生活習慣まで含めて伴走してくれる。
安全性と限界(大事)
併用は原則OKだが自己判断の多剤併用はNG:漢方と西洋薬には飲み合わせの注意があるものも
(例:甘草を含む方剤と利尿薬・ステロイド等で低カリウム血症リスクが上がる等)。処方・サプリは
必ず一覧を共有。
妊娠・授乳・持病・重症の症状(高熱・激痛・麻痺・呼吸困難・出血など)はまず医療機関へ。
エビデンスは領域によって濃淡あり:痛み・機能性胃腸症・月経随伴症状・更年期症状・術後の悪心などで
有効性を示す研究がある一方、全ての病態に万能ではありません。
清潔と衛生:鍼はディスポーザブル(使い捨て)を使用するのが一般的。施術所の衛生環境を確認。

よくある誤解
「西洋か東洋か、どちらか一方だけ」ではない:両者の得意分野が違うので、上手に併用するのが現実的。
即効性ばかりを期待しない:急性症状に効く処方・ツボもありますが、体質改善は**数週間〜**の視点で。
漢方=自然=安全ではない:自然由来でも副作用・相互作用はあります。用法用量と体質適合が鍵。

まず何から始める?
1週間、睡眠・食事・便通・体温感覚(冷え/のぼせ)・ストレスをメモ。
上の情報を持って、漢方外来や鍼灸院で相談。
自宅では
朝:白湯1杯、肩首ストレッチ、合谷・足三里を各30秒。
夜:ぬるめ入浴、デジタルデトックス30分、内関ゆっくり押し。
食:冷たい飲み物を常温/温へ、よく噛む。

メンタルケアと更年期
東洋医学では「こころとからだは切り離せない」という考え方が基本です。
ですからメンタルケアと更年期は一緒に語られることが多いです。

🌿 東洋医学からみたメンタルケア
1. 感情と臓腑の関係
東洋医学では「七情(しちじょう)」=喜・怒・憂・思・悲・恐・驚を心身のバランスに影響する要素と考えます。
怒 → 肝(気の流れ):イライラ・頭痛・肩こり
思 → 脾(消化吸収):考えすぎ・胃もたれ・下痢
悲・憂 → 肺(呼吸・皮膚):ため息・息苦しさ・乾燥
恐 → 腎(生命力):不安・腰痛・冷え
喜 → 心(精神活動):過度な興奮・不眠
つまり感情の乱れは体の機能にも直結する、とみます。
2. よくある不調パターン
気滞(きたい):ストレスで気の流れが滞る → イライラ、喉のつかえ、胸が張る
気虚(ききょ):エネルギー不足 → だるい、気力が出ない、落ち込みやすい
血虚(けっきょ):血が足りない → 不眠、めまい、不安感、集中力低下
陰虚(いんきょ):潤い不足 → のぼせ、寝汗、不安、焦燥感

🌸 更年期(45〜55歳ごろ)の東洋医学的理解
主に**腎(じん)**の衰えと考えます。腎は「生命エネルギーの貯蔵庫」であり、加齢とともに少しずつ
減っていく。
その結果、陰陽のバランスが崩れやすくなる → ホットフラッシュ、発汗、のぼせ、動悸、不眠、情緒不安定、
冷えなど。

特に多いのは
腎陰虚タイプ:熱が上にこもる → のぼせ・寝汗・不安
腎陽虚タイプ:冷えが強い → むくみ・倦怠感・抑うつ
🌱 ケアの方向性
1. ツボ押し(1日1〜2回、各30秒〜1分)
内関(ないかん):手首のしわから指3本分内側、2本の腱の間 → 不安・動悸・吐き気
神門(しんもん):手首の小指側のしわのくぼみ → 不眠・緊張・イライラ
太衝(たいしょう):足の甲、親指と人差し指の骨の間 → 気滞によるイライラ・頭痛
三陰交(さんいんこう):内くるぶしの上、指4本分のところ → ホルモンバランス、更年期症状全般
百会(ひゃくえ):頭のてっぺん → 不安感・めまい・気分安定
2. 漢方の考え方(代表例・必ず医師に相談)
加味逍遙散(かみしょうようさん):イライラ・不安・更年期ののぼせ
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):血の滞りによる肩こり・頭痛・生理不順
六味地黄丸(ろくみじおうがん):腎陰虚タイプの更年期 → ほてり・寝汗
八味地黄丸(はちみじおうがん):腎陽虚タイプの更年期 → 冷え・疲れ・排尿トラブル
3. 生活養生
睡眠:22〜23時には就寝。夜更かしは陰を消耗し、不安感を悪化させます。
食事:
陰虚タイプ → トマト・豆腐・きゅうり・梨・黒ごま(潤す)
陽虚タイプ → シナモン・生姜・羊肉・ニラ(温める)
呼吸法:吐く息を長く(4秒吸って、6〜8秒吐く)。不安や動悸を鎮める。
軽い運動:散歩・太極拳・ヨガで気血の巡りを整える。

まとめ

メンタル不調も更年期も、東洋医学では「気血水の乱れ」と「腎の衰え」が大きなカギ。
ツボ・漢方・生活養生を合わせて使うと、心身のバランスが整いやすい。
西洋医学のホルモン治療や抗不安薬と両立させるケースも多いので、「どちらか」ではなく
「上手な使い分け」が安心。

「更年期のタイプ自己チェックシート(東洋医学式)」
貴方はが「陰虚タイプ」「陽虚タイプ」「気滞タイプ」どのタイプでしょう?
あくまで「体質の目安」で、診断ではありませんが、セルフケアや整体やマッサージを受ける際の参考になります。

更年期セルフチェックシート(東洋医学式)

以下の項目にチェックを入れてください。
最も多かったタイプが、いまのあなたの「体質の傾向」です。
🔥 【腎陰虚タイプ】(潤い不足・熱が上にのぼる)
□ 顔がほてりやすい
□ 急に汗をかく(特に夜の寝汗)
□ のどが乾きやすい
□ 不安感・焦燥感が強い
□ 眠りが浅い、夢をよく見る
□ 手足のほてり
👉 傾向:エネルギーの「陰(水分や潤い)」が不足して、体がカッカしやすい状態。
👉 ケア:黒ごま・豆乳・梨・トマトなどで潤い補給。呼吸をゆったり。

❄️ 【腎陽虚タイプ】(冷え・エネルギー不足)
□ 手足や腰が冷える
□ トイレが近い、夜間頻尿がある
□ 疲れやすい、気力が出ない
□ 顔色が白っぽい
□ むくみやすい
□ 下痢や軟便になりやすい
👉 傾向:体を温める「陽」の力が弱っている状態。
👉 ケア:生姜・シナモン・羊肉・ニラなどで体を温める。ぬるめの半身浴。

🌬️ 【気滞タイプ】(ストレス・気の巡りの悪さ)
□ イライラ・怒りっぽい
□ 胸やのどがつかえる
□ ため息が多い
□ 肩こり・頭痛が出やすい
□ 生理周期が乱れやすい
□ お腹が張る・ガスがたまりやすい
👉 傾向:ストレスで「気」が巡らず、こもっている状態。
👉 ケア:軽い運動・ストレッチ・深呼吸。柑橘類・香草・ミントティーで気を流す。

💧 【血虚タイプ】(血の不足)
□ 顔色が青白い/唇の色が薄い
□ めまい・立ちくらみがある
□ 不安・落ち込みやすい
□ 髪がパサつきやすい・抜け毛が気になる
□ 爪が割れやすい・薄い
□ 眠れない・夢が多い
👉 傾向:血が不足し、心や脳に十分な栄養が届かない状態。
👉 ケア:黒豆・ほうれん草・レバー・なつめ・プルーンなどで補血。早寝早起き。

✅ 判定のしかた
各タイプのチェック数を数えてください。
最も多いタイプが今の傾向。
2種類以上に当てはまる場合 → 「混合タイプ」(例:腎陰虚+気滞)として両方のケアをバランス
よく取り入れましょう。

ケアのヒント(まとめ)
腎陰虚:潤いを養う(豆乳・黒ごま・果物)+ゆっくり休む
腎陽虚:体を温める(生姜・温野菜・軽い運動)+冷やさない
気滞:気を巡らせる(運動・深呼吸・香り)+ストレス解消
血虚:血を補う(鉄分・黒い食材)+睡眠

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